「もっと速い馬がほしい」をどう読むか
Thursday, November 6, 2025 · B. Ackkerman · Product · 5 min read
ユーザーの発話を鵜呑みにせず、行動目的から本当のニーズを掘る。
「ユーザーに何がほしいかを聞けば、正解が返ってくる」と考えると、プロダクトは簡単に行き詰まる。 有名な「もっと速い馬がほしい」という話が示しているのは、ユーザーが嘘をつくということではない。 ユーザーは自分が知っている選択肢の範囲でしか、欲求を表現できないということだ。
1. イノベーションは新しいニーズの発見ではない
自動車はイノベーションだったが、「速く移動したい」というニーズ自体は19世紀に突然生まれたわけではない。 人類はずっと前から移動を速くしたいと願っていた。 変わったのはニーズではなく、解決方法の質だ。
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config:
look: handDrawn
theme: dark
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flowchart LR
A[本質的ニーズ: 速く移動したい] --> B[既存解: 馬]
A --> C[より良い解: ガソリン自動車]
B --> D[限界: 速度・距離・運用]
C --> E[改善: 速度・到達範囲・安定性]
イノベーションとは、新しいニーズの発見ではなく、 本質的ニーズに対するより良い解決方法の発見 だと捉えるべきだ。
2. 「欲しいもの」を聞くだけでは本当のニーズは見えない
ユーザーに「何がほしいか」をそのまま聞くと、表層の回答が返る。 たとえば「もっと速い馬がほしい」は、解決案の形をした発話だ。 ここで止まると、探索は浅いまま終わる。
必要なのは「何がほしいか」ではなく、「なぜそれが必要か」を掘ることだ。 目的を掘ると、解決案の選択肢は一気に増える。
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config:
look: handDrawn
theme: dark
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flowchart LR
A[もっと速い馬がほしい] --> B[なぜ?]
B --> C[目的地にもっと早く着きたい]
C --> D1[限られた時間で往復したい]
C --> D2[時間をかけると貨物が腐る]
C --> D3[相手に早く情報を伝えたい]
D1 --> E1[自動車]
D2 --> E2[冷蔵技術・冷蔵庫]
D3 --> E3[電話]
同じ「速く」という言葉でも、背後の目的が違えば最適解はまったく変わる。 ここで納得して掘り下げを止めないことが、探索の質を決める。
3. 「言われたまま作る」と「ニーズに応える」は別物
「ユーザーの声を聞く」と「ユーザーの言葉をそのまま実装する」は同義ではない。 実務では、次の3つを明確に分ける必要がある。
- 悪手1: ユーザーの声を聞かない
- 悪手2: コンセプトに合う声だけを都合よく拾う
- 良手: ユーザーの声を起点に、行動目的まで掘ってから解決策を設計する
つまり設計者の仕事は、要望の翻訳ではなく、目的の同定だ。
4. ヘンリー・フォードの引用が示すもの
「もし顧客に何がほしいかを聞いていたら、彼らはもっと速い馬がほしいと答えただろう」という言葉は有名だが、 実際にフォード本人の発言ではないという説もある。
それでもこの話が実務に残した教訓は明確だ。 「発話の表面」ではなく「行動の目的」にアクセスしない限り、非連続な解決策には到達しにくい。
おわりに
ユーザーリサーチの価値は、要望を集計することではない。 要望の背後にある制約・目的・文脈を特定し、解くべき問題を言い直すことにある。
「もっと速い馬がほしい」と言われたときこそ、 最初に返すべき言葉はひとつだ。
「なぜそうしたいのか?」
This is an excerpt from B. Ackkerman's 「もっと速い馬がほしい」をどう読むか article. I highly recommend you give it a read!